地方都市の未来は、人口と機能の集約化にありか
第三のベビーブームの波はついに訪れず、少子高齢化は歯止めがきかずに進展が続いている。近い未来には、労働人口が不足するのは言うまでもない。
そのような背景から、地方ではいまコンパクトシティという考え方が注目されているようだ。それは、人口および機能を集約することに他ならない。
どこの地方でもそうだが、中心街はシャッター街、その反面で郊外の宅地開発を推進してきた。それは自然との共生というエコロジーの概念、および地方特有の豊かな自然がある、という特性を殺すものであった。
中心街では、郊外とは逆に空き家や空き地が広がっている。
その結果、地方都市では諸機能が分散し、効率性を欠いた構造となってしまった。人口が減少する未来を見据えると、これ以上郊外を開発しても無意味である。単なる自然破壊だけで終わる可能性が大となるに違いない。
郊外のナショナルチェーン(飲食・小売の)は、近い未来の人口減少で地方から撤退することが想像できる。そのとき地方都市は、どーするかである。
地方は言うまでもなく、ナショナルチェーンと心中する訳にはいかない。
コンパクトシティ化とは、空洞化した中心街に機能を再集結し、空き家や空き地の再活用を促進させていき、郊外へと拡散した人口をふたたび中心に集約し、さらには公共交通網を発展させることで、住みやすい街づくりを目指すことだ。
端的にいえば、無駄に広がった諸機能を整理することといえる。
引用:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25072920W7A221C1EA2000/
コンパクトシティ=街を集約化する
かつての歓楽街に朽ちたまま放置された建物
街の未来はいずこに
すでに街の集約化を計画および検討している地方都市は、全国で約52%に及ぶそうだ。それだけ地方が問題を把握し、現状に危機を感じている証といえる。
しかし、計画はしたが、実行するにはなにかと問題も多いようだ。その最大の要因が財政であるのは間違いない。さらには既得権益の問題も解決が難しいようだ。
地方では、土木・建築などの業者が既得権益を握っている。多くは郊外に開発が進むことで利益を得てきた。しかし、コンパクトシティでは、郊外の開発規制と中心街への居住促進がセットとなっている。
当然、土木・建築、さらには不動産などの業者からの反発が予想される。しかし、長期的視野で考えれば、人口減少で郊外もいずれは空き家だらけになる可能性が大であり、そこにいくら投資をしても無意味だ。(インフラ整備および維持費が膨大にかかるからだ)
いまや地方の政治家や行政、および市民は、短期的利益や一部の特権者だけの利益を捨てて、未来に備えるべきと考えるがいかにーー。
住宅や商業施設、交通機関、公共施設などの都市機能を中心市街地に集約する都市計画の総称。市町は立地適正化計画でまず病院や役所、商業施設などを集める区域と、住宅を誘導する区域を設定する。
<コンパクトシティの具体的な施策>
・公共および商業施設の集約化
・公共交通網の整備
・郊外の土地活用の規制(郊外の開発規制)
・中心街へ集約を促す土地利用の規制緩和
・居住誘導地域の設定
・その他(補助金や容積率の緩和、税制優遇などでエリア内に関連施設を誘致)
<先進事例/富山市の場合>
05年からコンパクトシティーづくりに乗り出した富山市は中心部と拠点になる地域をLRT(次世代型路面電車)やバスで結び、沿線居住を誘導。中心市街地の人口は15年まで8年連続で増え、地価も回復傾向にある。LRTやバス沿線に住む人口比率を16年の37%から25年に42%に引き上げるのが目標だ。
引用:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25048820V21C17A2MM8000/
まちの集約、市区の5割が計画・検討
全国の市区の約5割がコンパクトシティーなどで居住地や都市機能の集約を計画・検討をしていることが日本経済新聞の調査でわかった。人口減少や高齢化は行政サービス維持のため住民に街中でまとまって暮らすよう迫っており、多くの自治体が計画づくりに動き出している。公共施設の集約や交通網の再編で居住地を誘導したり、郊外の土地利用を規制したりする構想が目立つ。
地方の課題を整理する
木更津富士見通り
地方は住みやすいか否か
・物価=けっして安くはない(なぜならチェーン店は全国均一だからだ)
・土地・家賃=都会に比べれば、格安といえる。
・交通網=都会のような公共交通網はない。クルマが必需であり、生活に欠かせない道具となっている。その購入および維持費で格安の土地や家賃が相殺される。
・リアル店舗=多様性がない。地方では中心街のシャッター街が象徴するように地元商店は壊滅し、残るはチェーン店しかない。(小売はひどい有様だ)
・子育て=都会に比べれば、まだマシといえる。都会と違って学校には土のグランドがあり、自然も多くて開放的でもある。(子供にはきっといいはずだ)
・賃金・待遇=地元企業の場合、賃金が低く、福利厚生も充実していない場合が多いそうだ。なお、大手企業の支社などに勤めていると快適だそうだが。
<課題の整理>
1)賃金と待遇の改善
やはり、なんといっても地元企業の「賃金と待遇」につきる。若い人が都会に出て行くのは、そこに原因があるからだ。難しい課題であるが、地元企業が利益を上げられる体制を作れるか、それとも大企業を誘致するかである。
2)交通網の整備
「交通網の整備」が進めば、生活コストの削減に繋がるはずだ。脱クルマ社会もひとつの課題である。道路整備にかかるコストも削減できる。
3)商業の集約化
中心街に「商業の集約化」を設定すれば、そこに新たな機会が生まれる可能性がある。チェーン店だけでなく、地元店舗もあるという多様性が望まれる。そして、人が集まり街は活性化するかもしれない。
コンパクトシティという街の集約化は、上記した課題解決に有効性を発揮しそうな感じがする。やってみなければ判らないことも多いが、やる価値はあると思われる。
総括)施策はセットでないと意味がない
しかし、ひとつの案件には複合する要素があり、必ずセットで行われないと意味がないようだ。そこが一番の課題かもしれない。
都市機能の集約後押し 国交省、自治体支援へ新基準
国土交通省は福祉施設や子育て支援拠点といったまちの都市機能を一段と凝縮する。地方でのコンパクトシティーを加速する狙いで、自治体が都市開発できる面積の1割以下に中心地を集約する場合、補助金や規制緩和で支援する。
冒頭写真:木更津駅と富士見通り
撮影/村田賢比古
クルマを捨ててこそ地方は甦る (PHP新書)
日本人のほとんどが、田舎ではクルマなしには生きていけないと考えている。しかし、今、地方が「疲弊」している最大の原因は、まさにこの、地方社会が「クルマに依存しきっている」という点にある、という「真実」は、ほとんど知られていない。
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