廃墟シャッター街を再生した沼垂(ぬったり)テラス商店街

社会全般
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ハコ中心の再開発でなく、廃墟商店街を再生する

いまや日本全国、どこにいっても見られるのが商店街のシャッター街化である。そして人が集うこともなくなり、中心市街地の空洞化をもたらしている。

中心市街地の空洞化=ドーナツ化現象

このようなシャッター街を再生すべく、地方創生の掛け声とともに大規模再開発が行われた地方もある。しかし、当方が知る限りそれらの再開発事業はうまくいっていない。それどころか、大きな負債を背負っている始末である。

なぜ、シャッター街の再生ができないのか。そこでよく聞くのが、商店街の店舗や土地の所有者に再生しようという意欲がないことだ。

また商店街を再生するには、新しい創造性や新陳代謝が欠かせないが、それを阻害しているのが、複雑な権利関係といわれている。

さらには商店街は、個々の店から成り立っているが、それぞれ抱える事情や思惑がちがっていて、総意形成もできないそうだ。

シャッター街化の背景(中心市街地の空洞化)
大店法の緩和(商業施設の郊外出店)、モータリゼーションの進展(地方では車が必需)、郊外の宅地開発拡大(住民の移動)、などにより中心市街地の商店街の需要が減少し、人が集うこともなくなり、シャッター街化が進んだ。

地方では、この総意形成がないと物事が進まないといわれる。地方特有の地縁や血縁という問題もあり、また地方には特定の力を持った人たちがいる。

より具体的にいえば、あの人は嫌いだからという理由だけで、反対するだけでなく悪口を言いふらしたりするそうだ。狭い地域だから人間関係が重視される。

これらの事情を端的にいえば、損得の問題といえるだろう。要するに、得になるなら賛成するが、そうでなければ現状維持でいいということだ。

大規模再開発で得をするのは一部の地権者(権利関係者)や業者であるのは、過去の事例で明らかである。そして失敗したときは、住民にツケが回されてきた。

このように地方のシャッター街(商店街)は、錯綜する思惑や、地方特有の事情を抱えて前に進むこともできないようだ。

そこで地方行政は、マンション建設に補助金を出すという方向性を打ち出している。これは国が後押ししているらしいが、ある意味では商店街の再生を諦めたと同義といえるだろう。ちがうだろうか。

マンション建設で住民が増えるし、同時に住民税も増える。行政からすれば、なにかと面倒な商店街再生よりずっと理にかなっている。

上記した事情を鑑みると無理からぬことと理解できるし、なにより合理的である。しかし、一方ではなにかが欠けているような気がしてならない。

それは街の形成が、住宅地と郊外の商業施設だけでいいのかということだ。かつて地方にも街中に繁華街があり、歓楽街もあったが、いまでは多くの地方でそれらが急速に失われている。(大規模都市は除く)

あくまで個人的見解ですが、地方に住む豊かさとは、心の拠り所となる場所とはなにか、それらを考えると住宅地と大規模商業施設だけではどこか寂しいし、虚しいと思うばかりだ。

大規模商業施設があるのはいいが、所詮は地場の産業ではない、雇用は生むが収益は本社(東京が多い)のものである。

建築・商業のプロデューサーで著名な浜野安宏氏は、かつてシャッター街の再生について、「大金持ち(ビル・ゲイツのような)が商店街丸ごと買い取って、独善的なリーダーシップのもと、ゼロから作り直すしかない」と語っていました。

上記したような地方事情を考慮すると、あながち間違いではないと思われます。

前置きが長くなりましたが、廃墟化したシャッター街(商店街)を見事に再生させた数少ない事例がありました。

その規模はけっして大きくはないですが、前述した浜野氏が言ったように商店街を丸ごと買い取って再生しています。これは稀有なできごとと思われます。

その再生した商店街は、新潟県にあり、「沼垂(ぬったり)テラス商店街」といいます。

沼垂(ぬったり)テラス商店街 新潟市

廃墟化したシャッター街(商店街)を再生した稀有な例なのが、2014年に再生が始まった新潟市の「沼垂(ぬったり)テラス商店街」です。

商店街所在地は、新潟県北部にある新潟市の、信濃川河口に近い場所にあるそうです。(地図を参照ください)

この商店街は現在のように再生されるまで、見るからに廃墟化したシャッター街だったそうです。それを地元の飲食店オーナーが一念発起して、商店街を丸ごと(土地と建物)買い上げて、商店街の再生をはじめています。

飲食店オーナーは、地元で営業していて商店街がシャッター街化するのに危機感を抱き、なんとかしたいという思いが強くなったそうです。

一店舗がいくら頑張っても限界があり、やはり商店街という面で活性化し、人が集う場を創造していかないと未来がないと考えた末に行動を起こしています。

沼垂テラス商店街について
新潟市中央区の信濃川河口近くにある、古くからの町「沼垂(ぬったり)」。特徴的な名前のこの町で、もともと市場として使われていた長屋を改装し、昭和レトロな町並みを残しつつも新しく生まれ変わったのが『沼垂テラス商店街』です。

2010年から少しづつお店がオープンしはじめ、2014年に店舗全体を管理する事務所が開設。その後、続々とお店が増え、2015年春にはついに、旧沼垂市場のすべての長屋が店舗として開業することになりました。

30近くある店舗のラインナップはさまざまです。飲食店、カフェ、居酒屋をはじめ、ジュエリーショップ、お花屋さん、お総菜屋さん、八百屋さん、雑貨屋さん、陶芸工房やガラス工房、オリジナルの北欧雑貨を販売するお店、古本屋さん、古道具屋さん、床材のショールームなどなど…

沼垂テラス商店街の所在地:新潟市中央区沼垂東3丁目5番
引用:沼垂テラス商店街WEBサイト About

当初は、店舗の所有者から賃貸でテナントを集めることを考えたようですが、地方特有の事情もあり頓挫し、商店街を丸ごと買い取ることにしたそうです。

この辺りの事情は、前半に記した内容と重なります。商店街店舗の所有者は、再生どころか賃貸に出すこともやる気がなかったようです。

また、よくある再開発事業(商業施設というハコ物中心)と違い、外見はほぼそのままに、内部をリノベーションして活用しています。

昭和レトロな趣をそのまま活かしたことで、新しいテナントと古い趣の建物とが絶妙なマッチングを見せて、新しい魅力を発しています。

この様子を垣間みると、やはり商店街には新陳代謝が必要なのが判ります。中身が変わると客層も変わります。なにより活気が生まれるのが一目瞭然です。

定期的に商店街の中の交通を遮断して、朝市を開催したり、イベントも積極的に行っているようです。

当然ながら、このような商店街の活性化に賛同できない人たちもいるようです。しかし、そこは商店街丸ごと買い取っているので商店街の中にはいません。

どこにでも、なにをするにしても反対する人はいます。現在の商店街としても、その辺りのことは重々承知の上で活性化に取り組んでいるようです。

前半で記した浜野安宏氏が語ったように、「シャッター街(商店街)の再生には、丸ごと買い取って、リーダーシップを発揮する人材のもとで作り直すしかない」という提言がありますが、実際には大変難しいのは言うまでもありません。

それを現実にやってのけたのが「沼垂テラス商店街」です。

個人的な感想ですが、これをすごいと言わずして、なにをそう言うかです。とにかく、飲食店オーナーおよび関係者の努力は並大抵ではなかったと想像します。

これからのさらなる発展、そして継続を願ってやみません。

参考・写真引用:沼垂テラス商店街WEBサイト
https://nuttari.jp/

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