■コラム|きさらづに夢はあるか 地方にある現実と夢のボーダーライン

夢を見ることは誰にでもできるが…

レペゼンキサラヅー

 レペゼンキサラヅ、「なんのこっちゃー」と思った人も多いに違いない、とくに中高年には意味不明であるに違いない。その意味は後述いたします。

 先日、「SRサイタマノラッパー/マイクの細道」というドラマ(テレビ東京で放映された)を動画配信で一気に観てしまった。

 ちなみに全11話(各23分)ありました。当方はテレビを観なくなって久しいですが、このようなドラマを放映したテレボ東京の判断には、さすがと思うばかりだ。またドラマを観て感動したのはずいぶんと久しぶりです。

 このドラマは、木更津および市町村の集合体である千葉県の永遠のライバル、ダサイタマこと埼玉県の片田舎(深谷市)を舞台にした、いわゆる青春ドラマである。一見、コメディーのようだがけっしてそれだけではない。

 コメディー、ペーソス、そしてシリアスな要素を内包しながら、「青春の夢と希望と現実」の狭間で揺れ動く若者の姿を描いていく。揺れ動く若者の姿は、痛々しくもあり、可笑しくもあり、また哀しくもある。

 例えばこんな具合に、主人公のひとりIKKUは豪語する、「ここ埼玉から、世界に向けて、ソウルトゥソウル、メッセージを送ってんだよー」と、その意気込みは勘違いも甚だしいほどに、可笑しくもありまた哀しい。

 ちなみに、ドラマより先に映画版があり、2009年に自主製作によって第1作が公開されています。映画およびドラマの内容を簡潔にいえば、「ラッパーを夢見る一地方の青年が辿る夢と現実のボーダーライン(境界線)」を彷徨う物語となっています。

 当方の勝手な想像ですが、ドラマ(映画も含めて)のテーマは、ラッパーはどうでもよくて、それは単なる狂言廻しであり、「地方で見る夢ははたして叶うか否か、あるいは若者はいま夢を見ているか」というものではないかと思いました。

 東京が舞台であれば、ありきたりの青春ドラマで終わったはずだが、そうならなかったのは、いわずもがな地方が舞台だったからだ。東京には夢がそこらに転がってるかもしれないが、地方には夢なんて見るのは愚か者でしかない。

 だから夢を見るものは、東京に出ていくしかない。しかし、東京で夢を叶える確率は限りなくゼロに近い、一方地方では限りなくマイナスである。違うか。

常識の壁を越えられるか
 夢と現実のボーダーラインには、常識という壁がある。東京ではその壁に若干の抜け穴があるが、地方ではその壁は厚くて高い。常識の壁に挑むのは、無謀な行動型のドンキホーテとなるしかない。

 映画版「SRサイタマノラッパー」では以下の様なシーンがある。

 ある日、SHO-GUNG(主人公たちのラップグループ)は公民館で開催される「深谷市民の集い」で初めてのパフォーマンスを依頼される。

 それは初めてのステージだった。しかし、聴衆はヒップホップなどに興味のない市民たちばかり、パフォーマンス後には、数々のダメ出しをくらい、あげくにはちゃんと働いて市民税を払いなさい、などと説教されてしまう。

 そして主人公たちは想う、深谷(ドラマの舞台)ではヒップホップは無理なのかとーー。

「SRサイタマノラッパー」の主人公たちは、スクエア(四角四面)な人たちには、単なる愚か者の若者たちと映るはずだ。しかし一方で、たった一度の限りある青春の時期に夢も見れないでどうするかである。

 日本では一度失敗すると、その後がないに等しい。チャレンジすることは、良いこととはされない風潮、風土が、とくに地方では根強く定着している。

 学歴、学閥、地縁血縁、前例踏襲、長いものには巻かれろ、等々が跋扈する日本であるが、地方ではそれがさらに激しい。そして微かな可能性を求めて、若者は東京へと一極集中していくのは、言うまでもないことだ。

 時代はいつか変わるが、地方にはその予兆さえ感じられないがいかに。

「レペゼン」とは
ヒップホップ用語で「◯◯を代表する」という意味である。 「〜からやってきたぜ」という意味でも使われる。 この◯◯には出身である地元の名前が入る。

SRサイタマノラッパーの概要

アメリカまで8000マイルーー

「SRサイタマノラッパー」は、埼玉県深谷市を舞台にしたラッパーを目指す若者の夢と現実を描いた青春物語である。脚本・監督は、入江悠。2009年に自主映画として製作されて、一躍注目を集めて数多くの映画賞を受賞している。

 ちなみ映画の製作費は、入江監督の自費で賄われた。入江氏は、自主映画製作と同時に、映像作家として広告代理店などの依頼で作品を制作していた。愛知花博などにも関わっていたようだ。「SRサイタマノラッパー」以後は、その才能が認められてメジャー作品の監督にも多く起用されている。

<SRサイタマノラッパーのあらすじ>
 サイタマ県の片田舎で不器用にラッパーを目指す青年たちの、どこか哀しく、やがて可笑しな日々。北関東のど真ん中、レコード屋もライブハウスもないサイタマ県北部のフクヤ市。デコボコなヒップホップグループ「SHO-GUNG」の仲間たちは、まずはフクヤ市でライブをやろうと夢見ている。しかし現実は…。

<入江悠監督の作品/2009年以降>
・SR サイタマノラッパー(2009年)
・SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム(2010年)
・劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ(2011年)
・同期(2011年WOWOW ドラマW作品特別上映)
・SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者(2012年)
・タマフルTHE MOVIE 〜暗黒街の黒い霧〜(DVD)(2012年)
・日々ロック(2014年)
・ジョーカー・ゲーム(2015年)
・太陽(2016年)
・22年目の告白 ー私が殺人犯ですー(2017年)
・ビジランテ(2017年)

<テレビドラマ)
・SRサイタマノラッパー/マイクの細道(テレビ東京系2017年1月-4月放送)

外部関連記事:SR サイタマノラッパー」が冗談じゃなく本当にドラマ化されたので急いで3部作を振り返ってみた

 以下は、「SRサイタマノラッパー(2009年)」とその続編の予告編、2のテーマ曲、そしてドラマの予告編です。

概要冒頭の動画:SRサイタマノラッパー/テーマ曲:SHO-GUNG

SRサイタマノラッパー

SRサイタマノラッパー2/女子ラッパー★傷だらけのライム

SRサイタマノラッパー2のテーマ曲

SRサイタマノラッパー3/ロードサイドの逃亡者

ドラマ/SRサイタマノラッパー ~マイクの細道~

 とにかく監督の手腕は確かなものがある。と同時に俳優陣たちの適材適所が光っている。とくにニートラッパー、IKKU役の駒木根隆介(ふとっちょ)が素晴らしい。

 自主製作映画としてスタートしたので、当然の様に有名な俳優は出ていない。芸能プロがごり押しするイケメンや美人もいない。しかし、それがゆえに新鮮で好感がもてる作品となっている。

 またラッパーを主人公としたのは、夢と現実のボーダーラインをより際立たせている。なぜなら、ロックミュージシャンではありきたり過ぎるからだ。

冒頭写真:木更津市 矢那川
撮影:村田賢比古
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SRサイタマノラッパーO.S.T.(サウンドトラック)
まったく新しい甘酸っぱいヒップホップ青春映画の傑作登場!不器用にラッパーを目指す青年たちを描いたどこか哀しくやがて可笑しい青春映画。随所に挿入される斬新なラップ、高品位なHIPHOPサウンドが特徴的。

崖っぷちにいた若き映画監督は、いかにして、数人の仲間と始めた自主制作映画を、ゼロ年代映画を代表する人気シリーズにまで育て上げたのか?映画監督・入江悠自ら責任編集を務め、「SRサイタマノラッパー」とともに歩んだ7年間の軌跡をじっくり振り返る、シリーズ唯一の公式本。

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